泣いた赤鬼 どこの山か分かりませんが、その山の崖の所に1軒のお家がたっていました。 そこには心の優しい赤鬼が住んでいました。赤鬼はいつも思っていました。 「僕は鬼に生まれたが、人間達とも仲良く暮らしていきたいな。ふもとの村の人 とも友達になりたいな。」 ある日そう考えるとたまらなくなって、家の前に立札を立てました。そこには (こころの優しい鬼の家です。どなたでもおいでください。美味しいお菓子もご ざいます。お茶も沸かして御座います。)とありました。 次の日村のきこり達がその立札をみて入ろうとして、そっと様子を伺いました。 「なんだか気持ちが悪いな」「だまして取って食うつもりかな」「危ない、鬼だ もの。」などと言っています。赤鬼は腹が立って、顔を出して大声でいいました。 「誰がだますものか!」「ワアー!出た。逃げろ!」鬼が呼んでも、どんどん逃 げて行ってしまいました。赤鬼は悔しくて涙を流しながら立札を壊しました。そ こに仲良しの青鬼がやってきました。たまに遠くからやってきたのにプンプン怒 っている赤鬼を見てびっくりして、その訳を聞きました。 赤鬼は自分の思っていることを打ち明けました。青鬼は考え込んでからいいま した。「これから、僕がふもとの村に行く。そしてわざと暴れよう。そこに君が 出てきて、僕の頭をぽかぽか殴る。そうすれば人間達は君を誉めるに違いない。 そうなれば安心して君の所に遊びにやってくるさ。そうしよう!」「それじゃ、 君に悪いよ」というのですが、青鬼は「いいよ!友達じゃないか。」と麓の村に 出かけて行きました。お爺さんとお婆さんの家に行き、二人がびっくりして逃げ だした後に暴れた振りをしました。赤鬼はやってきて友達の頭をぽかぽかと殴っ た振りをしました。青鬼は逃げるときに隅の柱にひたいをぶつけたので、本当に 痛がって逃げて行きました。その様子に村の人達は「感心な鬼だな。あの乱暴の 青鬼を殴ったぞ!いい鬼だ。」と赤鬼の家にみんな遊びに行くようになりました。 赤鬼は大喜びでした。毎日毎日が楽しくてたまりませんでした。けれど何日か 経つと青鬼のことが心配になってきました。山また山のふかい山奥にある青鬼の 家に行ってみました。青鬼の家の戸は閉まって開きません。しばらくして、そこ に張り紙があるのに気付きました。こう書いてありました。 「赤鬼君、人間達と仲良く真面目に付き合っていつも楽しく暮らしなさい。僕は しばらく君とお別れして、この山を出て行くことにしました。 君と僕が行ったり来たりしていては、人間達は気になって落ち着かないかも知 れません。そう考えて旅に出る事にしました。長い、遠い旅、けれども僕は何処 にいようと君を思っているでしょう。君の大事な幸せをいつも祈っているでしょ う。さようなら、きみ体を大事にしてください。どこまでも君の友達 青鬼」 赤鬼は黙って読みました。3度も4度も読みました。「ああ青鬼君、君はそん なに僕を思ってくれるのか」岩の戸に両手をあてて、顔も押しつけて、タラタラ と涙を流して泣きました。 皆さん、この話を知っていますね。これは何という話ですか? そう、泣いた赤鬼ですね。友達っていいですね。この話が大好きなんです。 私は友達のことを考える時にいつもこの話を思い出します。 友達を大切にしよう。友達と約束を守り、友達を傷つけるようなことをしない ように良く考えて行動しましょう。