【道徳実践記録】     
   資料   俊夫のけが    陸上競技大会をまえにして、グラウンドでは、各種目の選手たちが練習に余念がなかった。 スターテイング・ブロックのぐあいを直しながら、ふと見ると、高とびのバーをきれいに越え た俊夫が、いつまでもそのままの姿勢でうずくまっているのだ。弘はふしぎに思って声をかけ た。 「おい、どうしたんだ。」 「足が……、足が変なんだ 。」  俊夫は痛そうにくるぶしを押さえている。弘は驚いてかけ寄ると、肩をかして保健室へ連れ て行った。養護の戸川先生は、少しはれているくるぶしを見るとすぐ冷湿布 (れいしっぷ)を した。そして、「念のため、医師に見てもらったほうがいい。」といった。俊夫は立ち上がっ たが、痛そうに顔をしかた。戸川先生は心配して、「家まで車で送ってあげましょうか。」と いった。 「弘君がいっしょだから、だいじょうぶです。」  俊夫は、そういうと、門まで見送ってくれた戸川先生に礼をして、弘といっしょに学校を出 た。  弘は二人分のかばんを左手に持ち、右肩に俊夫をささえて歩きだしたがいくらも歩かないう ちに、これは大変なことになったと思った。  俊夫は顔をしかめ、額に玉の汗を浮かべて、必死に痛みをこらえているのだ。顔色も、さっ きよりなんだか青ざめて見えた。 弘は早く家へ連れて行かねばと、あせりを感じてきた。  まわりを見ると、ちょうど二軒ほどむこうに知り合いの文房具店があったので、そこにかば んをあずけ自転車を借りて、俊夫を乗せていくことにした。 「これならすぐに家にいけるさ、さあ乗れよ。」と弘がほっとしたように俊夫に向かって笑い かけた。しかし、俊夫は答えずに、黙って荷台をながめていたが、やがて腰を下ろした。通り に出ると車が多く、弘は必死になってハンドルを握った。  止まっていた車の陰から、幼い子供が飛び出したのは少ししてからだった。弘が急にハンド ルを切ったために、自転車の二人は道路に投げ出されて、俊夫はしばらくは痛みで立ち上がる こともできなかった。  けがもなかった子供を見てほっとしている弘に向かって、子供の母親の声が響いてきた。 「この子がけがをしたらどうするつもりなの。だいたい自転車の二人乗りがいけないっていう 規則ぐらい中学生なら分かるでしょう。」  俊夫も弘も、青ざめた顔でその場を離れ、ようやく俊夫の家にたどりついた。弘はどうして も気持ちがおさまらなかった。 「いくら、規則だって…ひどいよな、今なんか特別な場合じゃないか。」「それはそうだけど さ…。」俊夫は泣きだしそうな声でいった。 「どうしてさ、ぼくたち悪いことしているんじゃないよ。」
   <その1> 主題名 きまりを守る心 教材名 「俊夫のけが」   (秀学社:道徳の学習「いくら規則だって」より一部改作、改題したもの)  1. 主題と生徒   生徒は集団の一員としての個人の役割や、集団に所属している自分の責任が次第にはっきり とらえられるようになってきている。また、集団生活を通してきまりのもつ意味を考えたり、 でき事を基に法やきまりを持ち出して話したりするなど、きまりの必要性をある程度理解でき るようになってきている。 しかし、きまりにかなった行動をすることで安心している反面、 さし迫った問題があるとその解決で視野が狭くなり、きまりを守ることの大切さをないがしろ にする傾向がある。そして、このような傾向はともするときまりによって維持されている秩序 を乱したり、結果的には自分を苦しめることになる。 そこで、本時は生徒がきまりをなかな か遵守できないことからくる自転車の二人乗りを取り上げる。そして、自分勝手な判断できま りの遵守をないがしろにすると交通事故や自身のけがに結び付くことに気付かせる。生徒は教 材にある主人公二人の行動から、きまりを守ることの大切さをとらえ直していくものと思われる。 2. 指導の構想 本教材の要旨は次の通りである。 ┌─────────────────────┐ │ 陸上競技大会を前にして、練習中に足を痛め│ │た俊夫は家まで送ってくれるという養護の先生│ │に、弘と帰るから大丈夫だと言った。 │ │ 帰途、俊夫の様子は悪くなり、あせった弘は│ │途中の文房具屋で自転車を借り、痛みで苦しそ│ │うな俊夫を乗せて二人乗りで帰ることにした。│ │ 車の多い通りを走っている途中で幼い子の飛│ │び出しに会い、転倒してしまう。弘は子供がけ│ │がをしなかったことにほっとしたが、その子の│ │母親からは二人乗りをとがめられてしまった。│ │また、転倒したために俊夫の痛みは前よりも増│ │してきた。 │ │ ようやく俊夫の家にたどりついたが、二人の│ │心は晴れなかった。 │ └─────────────────────┘  この教材を使って生徒に気付かせたい点は次のこ とである。 @ 戸川先生が車で送ると俊夫に言った下校時の心  配を俊夫は理解できずに、事態を受けとめる適切  な判断力に欠けていたこと。 @ 二人乗りをしたことは社会の秩序を乱し、二人  にも危険な事態を招いたこと。よって、足を痛め  ているという理由で、自転車の二人乗りが例外と  して認められてもいいものであるとする判断は誤  っていること。  そこで、かばんを持ち俊夫を支えて下校する弘の 行動をとりあげ、時と場合によっては二人乗り程度 の違反は大したことでないとする弘の判断、規則を 守ることが大切だとする子供の母親の判断、の2つ に対するとらえ方を交流させる。その後、俊夫が釈 然としないのはなぜかを検討させることから、初め に弘と俊夫が浅く考えていたきまりのもつ意味をと らえ直させたい。  以上のことから、次の授業仮説を設定した。 ┌─────────────────────┐ │ 二人乗りの是非を「それはそうだけどさ…。│ │」という俊夫の言葉に着目して検討すれば、き│ │まりの持つ意味に気付いてきまりをより深くと│ │らえていく。 │ └─────────────────────┘ 3. 具体的な手だて 本時の検討が事実に基づいて行われるようにするた めに情況把握を前時に行う。  また、本時に関わっては次のような手だてを講じる。 ┌─────────────────────┐ │ア.自分の考えを再検討させるための発問を行│ │ う。 │ └─────────────────────┘  足を痛めたことがきまりを破ってもいい理由だと したり、きまりはきまりだから守らなければならな いとだけ考えている生徒が俊夫の立場から情況を振 り返り、きまりのもつ意味を再検討させるために、 次の発問をする。 <発問2>「それはそうだけどさ…。」と言った煮 え切らない俊夫は何を考えていたのですか。あな  たの考えを発表しなさい。 ┌─────────────────────┐ │イ.生徒一人一人の考えを明確にさせる発問を│ │ 行う。 │ └─────────────────────┘  二人乗りをした理由について弘や母親の立場に立た せて生徒一人一人の考えを事実を基に明確にさせ るために、次の発問を行う。 <発問1>「今なんか特別な場合じゃないか。」と  いう弘にあなたは賛成ですか、反対ですか、理由  も発表しなさい。 ┌─────────────────────┐ │ウ.生徒一人一人の考えを記入した座席表を配│ │ 布する。 │ └─────────────────────┘  仲間の考えがどの事実を基に出てきたのかを明ら かにし、互いの意見交換を促すために<発問1>に 対する生徒一人一人の考えを座席表に記入し、全員 に配布する。 ┌─────────────────────┐ │エ.バリューシートを使用する。 │ └─────────────────────┘  生徒がどの事実をどのように見て判断してきたか をみとるとともに、自分の考えの変容が見れるよう にするために使用する。  バリューシートには次のことを記入させる。 ・<発問1>についての自分の考え。 ・<発問2>についての自分の考え。 4. 時間配当(全2時間) @ 教材を読み、情況把握をする。……1時間 @ きまりをとらえ直す。    ……1時間   5. 授業の実際   ア.ねらい  俊夫の「それはそうだけどさ…。」という煮え切 らない気持ちに対する考えを互いに発表することから、 自転車の二人乗りについて、足のけがなら理由とし てやむを得ないとする考えや、きまりのもつ意味を考え ずにきまりだから破って乗ることはいけないとする   使った展開案(参考) ┌───────────────────────┬──────────────────────┐ │ 学習活動・内容 │ 教師の働きかけと意図 │ ├───────────────────────┼──────────────────────┤ │@ 自転車の2人乗りの是非について、理由を明ら│@ 2人乗りを警官にとがめられた2人の行為に│ │ かにして、各自の考え方を発表し合い、自分の意│ 対するそれぞれの考え方を検討させるために次│ │ 見の根拠も確認する。 │ の発問を行う。 │ │(C特別な場合で仕方ないA特別な場合ではない)│┌────────────────────┐│ │C 2人乗りは人に迷惑をかけるなどの大きな悪い││<発問1> あなたが清ならば「いまなんか││ │ ことではないと思う。 ││特別な場合じゃないか」と思いますか、思い││ │A きまりを守らなくてよいという例外があるのは││ませんか、理由も明らかにして発表しなさい││ │ おかしい。 │└────────────────────┘│ │C 足を痛めている人を運んでやるのだから、自転│@ 一人一人が許される事かどうか、どちらかの│ │ 車の2人乗りくらいは違反としてとりあげなくて│ 立場に立たせて考えさせ、板書する。 │ │ もよい(救急車の信号無視の例などをあげる。)│@ 根拠になった事実を分かりやすく色分けする│ │A 清の都合で自転車に乗ったのであり、特別な場│@「2人乗りは悪い」という意見が多数を占める│ │ 合というのはもっと(生命に関する)緊急な場合│ ようなら、Cの意見を教師の方で強化する。 │ │ の事をさすのだろう。 │@ 討論が一方に片寄り、交流しないような場合│ │C 「悪いことは悪いのだ」と警官は言ったが、一│ には次の助言をする。 │ │ 概に決め付けることは良くない。事情によって悪│ 「あなたが警官だったら、このふたりをどう扱│ │ いことの程度の差があると思う。 │ いますか?」 │ │A 江川先生に送ってもらっていればきまりを破る│@ 互いの主張や意見の中で大切であると思われ│ │ こともなかったと思う。状況を見誤ったのが悪い│ る点についてはメモをさせながら問い合いをさ│ │C できるだけ自分の力で解決しようとした努力は│ せる。 │ │ 認めたい。警官も注意してから放してくれた。 │ │ │A 自転車に乗る前に、きまりを破ることになるの│ │ │ を考えただろうか。2人乗りをしたのは目先の苦│ │ │ しさから逃れるための我がままだと思う。 │ │ ├───────────────────────┼──────────────────────┤ │A 自分の足を痛めたことが原因で、警官に注意さ│A きまりに対する自分の考えをとらえ直すため│ │ れた良雄の立場できまりを考え、きまりを破る理│ に次の発問をする。 │ │ 由を自分の都合の良い解釈から作っていることに│┌────────────────────┐│ │ 気付く。 ││<発問2> 泣きだしそうな良雄は、清の言││ │(良雄は有り難くないと思うA、有り難いと思うC)││動を有り難く受け取っていたのですか。あな││ │ ││たが良雄になった立場で意見を発表しなさい││ │C きまりを破ってまで送ってもらった清の行動が│└────────────────────┘│ │ 嬉しい。 │@ 代表的な賛否の意見を板書し、理由を色別す│ │A 清は楽をしたかもしれないが良雄はきまりを破│ る。 │ │ る程の緊急性や苦しさはなく、ありがた迷惑だ。│@ 自分の意見を良雄の立場で書かせる。 │ │@ 自分の意見を良雄の立場で書く。 │ │ │ │ │ │ │ └───────────────────────┴──────────────────────┘ 観察の視点 @の検討を通して、きまりを破ることは自分勝手な解釈で理由づけすることに気付き、        きまりを守ることの大切さをとらえていたか。                               イ.展開の概要と考察 @ 自転車の二人乗りの是非についての考えを発表 する。 ┌─────────────────────┐ │<発問1>「今なんか特別な場合じゃないか。」│ │という弘にあなたは賛成ですか、反対ですか、│ │理由も発表しなさい。 │ └─────────────────────┘ (C印は賛成、A印は反対の生徒) P1 Cけが人がいれば仕方がない。救急車だって信  号無視をすることがある。 P2 A皆に迷惑をかけるし、事故でも起こしてけが  がかえってひどくなったら大変だ。 P3 A規則は規則だから。特別な場合ならば先生に  送ってもらえばよい。 P4 C弘も事故に気を付けている。歩いていて手遅  れになれば大変だからやむを得ないと思う。 P5 A二人だけが特別な行動をしていて他の人は知  らないのだから、規則を破っているととられても  仕方がない。 P6 A信号も特別な場合だからといって赤なのに渡  るようなことをすれば社会がばらばらになって、  きまりもめちゃくちゃになってしまう。 P1 C特別かどうかに基準がいる。立てないくらい  のけがをしたのだから重症ということで特別だと  思う。 P7 A特別な場合にも限度がある。先生が送ってや  ると言ったのに断ったぐらいだから、特別ではな  いと思う。 T けがにも限度があると言ってるがどのくらいか P8 C足のけがくらいと言っているが30分しか命  がもたないというなら特別な場合だし、けがと言  っても後遺症もあるし、治療は早いほうがいい。 P9 A特別な場合なら家の人を呼ぶとかタクシーと  かもっと安全な方法がある。 P10 A特別という言葉の意味が広すぎる。特別だか  らとスピード違反していたら社会がおかしくなっ  てしまう。救急車があるのだから、治療が大事な  らば呼べばいい。 P4 C先生が送ってくれるのを断ったのは先生に迷  惑をかけずに弘に頼ろうと思ったからだ。途中か  らタクシーを呼ぶというのは俊夫の考えに合わな  い。 P11 Aけがをしたのは俊夫で、自転車で送ると言い  だしたのは弘だ。そこで俊夫がぐずぐずしていた  わけで本人の承諾をえていない。俊夫が納得する  方法をとったほうがよい。 P12 A規則を作ったのは世の中がうまくいくためで  あり、二人乗りの禁止は危ないからだ。文房具屋  でタクシーを呼ぶのは文房具屋に迷惑をかけると  言っているが、自転車を借りるのも同じだ。 P1 C限度を考えることはけがの度合いがわかって  からでないと行動できないことになる。ここには  俊夫が青ざめて必死に耐えているとあるから、だ  いぶ重いし、逆にけがの度合いが分からないから  こそ早く連れていくという考えもある。 │ 生徒の<発問1>に対する判断は次のとおり│ │である。 │ │ 学級生徒42名 │ │A 二人乗りの理由を否定する。 21名 │ │ ・規則を守ることが大切だ。 (11名)│ │ ・特別の場合には該当しない。 ( 3名)│ │ ・他の方法がある。 ( 7名)│ │C 二人乗りの理由に賛成する。 21名 │ │ ・特別な場合である。 │ │ 二人乗りがいけないとする生徒は、集団の規│ │律がくずれてしまうことを挙げている。また、│ │事情によってきまりを破っても仕方がないが、│ │この程度のけがでは該当しないという生徒と電│ │話や車など他の方法が使えるとする生徒は互い│ │の意見にうなずいていた。 │ │ 二人乗りの理由が特別な場合であり、認める│ │とする生徒はけが人の救急がきまりよりも優先│ │するとしている。3回発言したP1はけがが優先│ │するとしながら、「けがの程度が問題である」│ │「大部けがが重いから」と理由を少しずつ変え│ │て話している。 │ A 弘や俊夫に欠けていた点に気付かせるために次の 問をする。 ┌─────────────────────┐ │<発問2>「それはそうだけどさ…。」といっ│ │た煮え切らない俊夫は何を考えていたのですか。 │あなたの考えを発表しなさい。 │ └─────────────────────┘ P13 子供の母に怒られて、やっぱり自分たちのした  ことが悪いと考えている。 P14 素直に先生の好意にしたがって車に乗っていれ  ば非難されることもなかった。自分のやったこと  を反省している。 P15 自転車を借りた時に弘にやめようといえばよか  った。 P16 確かに二人乗りは悪いが、ハンドルを握ってい  るのは弘だし、俊夫は困っている。そしてけがを  しているし乗るしかない状態だった。 P17 自分のことをよく考えないで、先生に断ったか  ら、こんな結果になった。自分の判断が甘いと思  う。 P1 自分のけがのために他人に迷惑を掛けたと自分  を責めている。 P18 二人乗りは、先生に断った自分の判断の甘さが  基でやったことだから、はっきりとは言えないと  考えている。 T 言えないこととは何か。 P18 二人乗りはよくなかった。自分の判断が甘かっ  たなどだ。 P19 自分の判断が甘かったと思っている。また、文  房具屋で自転車に乗れと言われた時にのり気では  なかったが、乗ってしまい子供をひきそうになっ  たことで、悪かったなという気になっている。 P20 弘の判断が誤っていたのに俊夫は従ってしまっ  た、はっきりと自分の考えを言えばよかった。 P21 最初はすんなり乗ったと思うが、子供にぶつか  りそうになったり、自分でも痛い目に合ったりし  て、規則はやはり守らなければならないと思った と感じた。また、自分が先生に断って弘に頼って  いたから頭があがらないのだ。 T そのあたりをもう少し聞きたい。 P22 俊夫はいくらか弘よりはやってはいけないと思  っていたと思う。 P23 俊夫は規則は守らなければならないと考えてい ると思うので、前は賛成だったが反対に変える。 P24 俊夫の方は規則を破ってしまったことに後悔し  ていると思う。 P1 最初乗ってしまって、しょうがないと思ってい たと思うが、乗らなければよかったとか、判断が  甘かったと後悔しているようには考えられない。  後であれはよかったのか、悪かったのか判断でき  ない感じになっている。 │ 俊夫の煮えきらない態度は二人乗りをして悪│ │いと思っているからだと発言した生徒が多かっ│ │た。<発問1>でCだった生徒で、俊夫は二人│ │乗りをしたことを悪いと思っているという内容│ │の発言が10名。他に、俊夫は心配して行動し│ │た弘に対して悪いと思っているという発言が2│ │名。それぞれの発言からは、規則を破ったこと│ │に気掛かりな様子がうかがわれる。また、P1は│ │ここでも二度発言して、「人に迷惑を掛けてい│ │る。」「よかったか悪かったか判断できないよ│ │うになっている。」と初めに二人乗りは是認さ│ │れるとしたが、考えを変えてきている。 │ │ きまりを破ることは特別な場合には仕方がな│ │いとしていた P21は、さびた釘を踏んだことが│ │あり自転車に乗せてもらって助かった経験があ│ │る。しかし、子供を二人乗りでひきそうになっ│ │て悪かったと俊夫が考えていると言い、反対に│ │変わっている。P23も@では賛成だったが反対│ │に変わったと発言している。 │ │ Aの生徒の発言が少なくなり、きまりのもつ│ │意味をとらえ直していたかどうか発言からとら│ │えにくい。初めから「きまりなんだから守るの│ │は当然である。」という理由だけの生徒もおり│ │もっと発言させる必要があった。 │ B 今までの話し合いを基に二人乗りの是非について 最終的な自分の意見を書かせる。 (Cだった生徒の意見) P1:規則とはすべての人の安全を守るためのもので  なければならない。やはり、病人等の弱っている  人を守るのが本当の意味の規則だと思う。 P4:弘は俊夫に対して精一杯のことをしていると思  う。だから、2人には二人乗りをしてもいい理由  がある。コンスタンチンちゃんのやけどの例を見  てもビザなしでは許されない日本に来ることを許  されたわけだから、この場合と同じである。もう  一つ事の重大さの問題は残ると思うが。 P13 まだ、賛成だが、早く家につれていってやると  いう気持ちからだ。しかし、この問題はとても難  しい。 P19 冷静な判断ができなかった弘も悪いし、はっき  りいけないと言えなかった俊夫も悪い。どうして  も結論がでない。 P20 弘の仕方がない状況から見れば、俊夫に頼られ  て責任があるのに、判断が悪くて規則を破ったの  は悪いことだ。俊夫も意見を堂々と言えばよかっ  たし、弘に頼って自分たちでやろうとしたことが  この場合は間違いだと思う。P22 弘の友達を大切 にしていることはとてもよいこ とだと思った。 しかし、やり過ぎで規則を破ると俊夫のようにや らなければよかったと後悔するということも知った。 P23 はじめこの文を読んだ時は賛成だったが、話し  合いをしているうちに二人乗りはやはりいけない  と分かり、反対に変わった。  規則はみんなの 安全を守るためにあるものだか ら、必ず守るもの であるということを思った。 P25 二人乗りは悪いと思った。しかし、なんとかけ  がをした俊夫を送ってあげようとした弘の気持ち  には賛成している。二人乗りはどれほど危険かが  分かり、規則の大切さもわかってきた。(Aの生 徒の意見) P2 いくら急いでいようと二人乗りはいけない。危  険だからだ。本当に必要なら、救急車を呼ぶなど  安全な方法をとるべきである。 P3 もっと安全な方法を考えて欲しかった。しかし  弘の気持ちは分かる。友達を思いやることはいい  ことだが、それは二人にしか通じない。俊夫もい  い気持ちではなかったと思う。このことを弘も気  付かなくてはならないと思う。 P5 規則の難しさがよく分かった。特別なら規則を  破ってもいいという考えは分からなくはない。   しかし、自分の考えはあまり変わっていない。   今度は規則の守る範囲を考えてみたい。 P6 車でいけばよかったのにそれを断って規則を破  るのはおかしい。自転車に乗せて押していく方法  もあった。 P7 多分弘のような行動をしてしまうけれど、規則  は守らないといけない。特別な時というのは誰に  も言えると思うが、それで破ってしまったらひど  いことになると思う。自分たちだけで解決せずに  先生や家に電話をするなど他の方法を考えて行動  した方がよかった。 P26 この道徳から規則は守ったほうが自分のために  も人のためにもよいことだと思った。特別な場合  だから破ってもよいということは、規則を破った  人の言い訳けでしかない。救急車は信号無視をし  ているという意見もあるが、緊急の場合と本当に  考えるのなら、はじめから救急車に乗せる方がいい。 │ 最終的に意見が変わったと書いた生徒は次の│ │とおりである。 │ │・「特別な場合…」という弘に賛成していたが│ │ 反対に変わった生徒 →6名 │ │・反対していたがそうだけとは言えないと考え│ │ てきた生徒 →4名 │ │<発問1>で賛成だった生徒でも、特別な場合│ │とする根拠をどう考えたらいいかを書いている。 │ また、規則を守ることが自分自身を守ること│ │になると気付いた生徒も多い。 │ │ 先生に送ってもらうなど他の方法をとればよ│ │いという意見には、冷静な判断が必要なことを│ │述べている生徒と、誰かに頼ればいいという生│ │徒がある。 │ │ 初め反対の理由を規則だから守らなくてはな│ │らないとだけしていたが、秩序が混乱したり、│ │危険であるから規則を遵守する必要があると理│ │由が変わってきている生徒が見られた。また、│ │「自分も同じ情況に立てばやってしまいそうだ」 │と自分のもっている弱さに気付いた考えも述べ│ │ていた。 │  6. 実践から言えること @<発問2>で俊夫に立場を変えて、気持ちの不明  瞭な部分を考えさせると、俊夫の立場になって自  分の考えをとらえ直していく。立場を変えて自分  の考えを広げるために<発問2>は有効である。 @ 座席表に各自の意見を記入し、全員に配付した  ことは仲間の意見が分かり、互いの意見を出し合  いやすくするのに有効な手だてであった。 @ 「俊夫のけが」は自転車の二人乗りという生徒  にとって浅くとらえてしまいがちのきまりを取り  上げ、きまりの意味をとらえ直させることにある  程度適した教材であると言える。
    【技術実践記録】     
第1時限    第1学年2組 技術・家庭科学習指導案 1,題材 金属加工1 −状差しの製作− 2,目標  薄板金を使った状差しの設計、製作を通して加工のポイントを見つけ、 作品にいかしていくことができる。 3,指導の構想  本題材は、生徒が亜鉛鉄板の性質と加工の仕方をとらえ、構想通りに 作品作りができる力を高めることに意義がある。  状差しの製作では切断、折り曲げ、接合等の工程が考えられる。薄板 金の工具は、切断は金切りはさみ、曲げは折り台を使う。金属の加工は はじめての経験であり、生徒は切る、たたくことで加工できると予想は できる。しかし、金属のかたさや弾力、大きさ等に応じて、どのように 力をかけたり、固定すればよいか分からず、正確な加工ができない。  本時の折り曲げ段階では、板金の塑性を利用して曲げる部分のみ強い 力を加えるように、折り台と打ち木を使うことが大切である。  しかし、生徒は平均した力のかけかたができず、打ち木の角で平面を たたき、曲げの必要でない部分を変形させてしまったり、材料の固定が 不十分で、細かく、正確な折り曲げができない。  そこで、加工のポイントとなる材料の固定のしかたや工具の力のかけ かた等を見いだし、作品作りにいかせるよう本時では次のことを重視する。  折り台の使い方に注意しないと折り曲げが困難な部分をもとに、工具 に着目する。そして、幾つかの形を比較し、曲げる試行活動を通して、 曲げ方のポイントを見いだすと考えられる。以上の考えから次の仮説を 設定した。 ┌─────────────────────┐ │ 立体をなした板金の一部分の折り曲げを、か│ │げたがねと幾つかの鋼板を使って、試行させれ│ │ば、折り台と刀刃の固定が必要なことに気付き│ │力のかけかたを見いだしていく。 │ └─────────────────────┘ (1)  具体的な手立て  本題材の指導にあたり、生徒が問題意識を持って加工の原理を探り、 仲間とともに調べていきやすいように次の手立てを講じる。  @製作の工程と進度を同一にして、加工時の問題点を話やすくする。  A試験片を用いて加工法を探る試行活動を作品作りの間に行う。  B男子同士、女子同士のペアを活動の中心にし、試行、製作活動を徹底する。  本時の指導においては、次の手立てを講じる。  @誰もが正確な折り曲げが必要であることに気付くように、材料に対して工具が   大き過ぎる場合の加工法を取り上げる。  A必要な工具の他に、鋼板2枚を与え、治具として工夫させる。  B工具の違いに着目して、加工法を探る試行活動をさせる。  C加工のポイントを記入しやすいように学習シートを工夫する。  (2)  時間配当 (全20時間中、製作14時間) @ けがき              3時間 @ 切断               3時間 @ 折り曲げ             3時間  ・自作品の折り曲げ、折り返し 1時間  ・治具を使った折り曲げ    1時間(本時)   ・自作品の折り曲げ、折り返し 1時間 @ やすりがけ            1時間 @ 接合               2時間 @ 塗装               2時間 4,本時  (1) ねらい  既習の方法では難しい折り曲げ部分を工具と治具を工夫し、試行す ることから、力のかけ方と工具の使い方を見いだすことができる。 5,展開 (省略)
< 技術・家庭 > 主題 自分の課題を基に工具の使い方を仲間と検討  T 技術・家庭科における生き方を求めて学ぶ生徒  技術系列における生き方を求めて学ぶ生徒とは次の通 りである。 ┌─────────────────────┐ │ 身近な事物の製作や操作を通して、技術の裏│ │付けとなっている合理性、科学性を仲間と協力│ │して見いだし、自ら技術を高めていく生徒。 │ └─────────────────────┘  このような生徒を育成するために、互いに発表し合い、試作や実 験をしながら、設計・製作できる場を保証する。  そして、生徒が個々に自分に合ったやり方で方法や仕組みを追求し、 驚きや感動を味合うことができる授業を目指すこととする。 U 本年次研究の内容(第2年次)  1 研究の方向  様々な技術の進歩の中で私達の生活様式が変化してきているが、技術 を利用して、より豊かな生活を目指していくことに変わりはない。  技術・家庭では生活との関わりで、そこに使われている技術がどんな 原理を基にしているのかを明らかにし、自らの生活に役立てようとする 生徒を育成することが求められている。  物質的に豊かな生活の中でも、生徒は自分で製作する小物に多くの思 い入れをして、「いいものを作りたい。」「うまく作動させたい。」な どの願いをもつ。そして、結果や学習速度は異なるが、それぞれもって いる力や知識を精一杯使った取り組みをする。  1年次では、生徒がもっている異なった経験や技術を生かし、興味や 経験に沿った製作や調べ活動が個々に十分できるように系統的教材の構 成を中心に研究を進めてきた。 今年度も教材を系統的に構成し生徒が自分の技術が十分でない点に気付き、 仲間と共に追求する過程を重視したい。  生徒は自分に直面した、なぜうまく加工できないのかという疑問を解決し ようとして、その根拠となった合理性や科学性に気付く。  そして、その気付いたことを設計や製作に生かして行くときに、授業での 充実感をもつものと考えられる。よって、生徒が個々にそれぞれの経験や興 味から、難しいと感じたり、うまく加工できないとしたりする工程を中心に その解決方法を追求させる。 ここで、生徒がそれぞれ自分で課題をもち、 自分の技術を見直しながら、どうしたらよい作品作りができるかを見いだす ことができた時に個が生かされたと考えるのである。  初めての製作学習として、木材加工に取り組む1年生は「のこぎりで切る、 かんなで削る」という手順は知っている。しかし、工具の使い方で作品ので きばえが大きく異なってくることまでは予想ができない。また、経験から工 具をうまく使って製作できる生徒もいるが、大部分はうまく工具が扱えない。  そこで生活の経験からくる製作における技術の違いを考慮しながら、生徒 が製作を通して各工程での加工の仕方を調べたり、仲間と教え合う活動を重 視する。その調べたことを基に工程表作りをさせ、見通しをもった製作を各 自ができる場を大切にしたい。よって、本年度は生活経験の違いを配慮しつ つ、工程表作りを中心とした木材加工の指導過程と生徒が加工の仕方を調べ たり交流したりできる学習形態を工夫する。                   2 指導の実際  1年 「木材加工T - レタ−ラックの製作」   (1) 目標  工程表作りを通して、木材の性質とその性質を  生かした加工法を見いだし、作品の製作に生かす ことができる。                (2) 指導の構想 本題材の学習では、木材を使って日常の生活に関わる 小物の製作をする喜びを味わうことや、製作を通して日常なにげなく使って いる木製品の機能や構造などに見られる合理性に気付くことである。  木材加工は技術・家庭科における製作活動の第一歩として、構想や設計の 仕方、製作の手順を明らかにしていくなど1年生には初めての経験であり、 基礎として身に付けることが多い。  生徒の木材加工における経験は小学校、家庭で大きく異なっており、工具 を扱える者や全く未経験な者など様々である。そこで初めに完成までの手順 をあらかじめ調べさせ、工程を予想させてきた。  しかし、生徒には次のような様相がうかがわれる ┌─────────────────────┐ │ 作品のできばえが工具の使い方によって大き│ │く影響されることがつかめない。 │ └─────────────────────┘  生徒にとって、工具ははさみを使って紙を切る程度の経験しかない。それは 意図したように製作できたからである。しかし、例えばのこぎりを使った切 断は次の要素をもっている。・繊維を切り分けるように引くときに力が必要 である。・固定するために力が必要である。・刃を当てる角度で切れ味が変 化する。・厚みのある板の切断のために、のこぎりの刃が板を垂直に切り進 んでいるかどうか確認する。 これらが同時になされていることを生徒は予 想できないからである。  そのために、作品をよりよく作りたいという願いがあり、どの工具を使え ばいいかまでは考えるが、意図した加工をするために工具をどのように使え ばいいかにはなかなか至らない。  そこで、どの生徒にもうまく製作できない疑問を工具の使い方から見いだ させるために、小作品のレタ−ラックの製作と大作品として自由構想の作品 作りをさせる。小作品で木材加工の概要を知り、その経験を生かしてさらに 加工精度を高め、よりよい作品作りをすると思われる。小作品の製作に当た っては、小学校での経験や、教師(見本)作品の観察から生徒は、工具の使 い方では主に次の4つの工程を明らかにすればうまく製作できるとしている。 それは両刃のこぎりの切断、平かんなの切削、玄能の釘打ち、はけによる塗 装である。  そこで、班活動を基にレターラックにおける工具の使い方を自由に試験片 で練習させ、それぞれの問題点を出し合わせる。これらを解決し、詳しい工 程表づくりのために、班で工程を検討させると、生徒は個々につまずきや興 味などから自分の課題を明らかにして、各工具の使い方を調べる活動をする。 各工程を選択した生徒は工具の使い方を追求し、仲間と教え合うために同じ 工程を調べるもの同士でさらに追求班を作り、ビデオを観たり、資料を調べ たり試行活動から工具の使い方を明らかにする。この活動から得た自分の経 験を班にもどり、演示したり、確かめ合ったりして互いに交流することで、 より詳しく工程を見通した製作ができる。  以上の考えから次の仮説を設定した。 ┌─────────────────────┐ │ 試験片をうまく加工できなかった原因を資料│ │や試行活動を通して仲間と検討すれば、切断、│ │切削、組み立て、塗装における正しい工具の使│ │い方を明らかにした工程表を作ることができる│ └─────────────────────┘   (3) 具体的な手だて ┌─────────────────────┐ │ア、自分に必要な加工の仕方を書き入れる工程│ │ 表作りを中心に授業を構成する。 │ └─────────────────────┘  自分の製作できる力を知り、必要な加工の仕方は調べたり、仲間と検討しな がら工程表に書き込み、見通しをもって製作できる授業の流れを構成する。   ただし、安全な作業の注意だけは事前に徹底して指導しておく。  そして、製作を通して工程を見直し、調べたり、修正する場を保証するよう に時間の配分をする。  この工程表にしたがって、自分なりの計画で自由な進度で製作をさせる。 ┌─────────────────────┐ │イ 個々のつまずきや、興味などから同じ課題│ │ をもった生徒同士で追求させ、それを教え合│ │ う集団活動をさせる。 │ └─────────────────────┘  製作の見通しをもたせ、製作における個々のつまずきを自分で解決させる場を 保証してやるために課題によって追求する班を選択させる。  生徒はレターラックの製作における工具の使い方の問題を4つの工程(切断、 切削、組み立て、塗装)にあると予想する。そして自分のつまずきからどれか を選択し、班の仲間と教え合うことができるように調べたり試行活動を繰り返 すことから加工の仕方を見いだしていく。  各工程でねらう見いださせたい加工の仕方は次の通りである。 ┌────┬───┬────┬────┬──┐ │ 工程 │ 切断│ 切削 │組み立て│塗装│ ├────┼───┼────┼────┼──┤ │全体に見│のこぎ│かんなの│玄能の握│塗る│ │いだして│りの握│刃の出し│り方 │順序│ │欲しいこ│り方 │方 │ │と方│ │と │ │ │ │向 │ ├────┼───┼────┼────┼──┤ │多くの生│刃の使│力のかけ│頭部の使│使う│ │徒に気付│い方 │方 │い分け │塗料│ │いて欲し│ │ │ │の量│ │いこと │ │ │ │ │ ├────┼───┼────┼────┼──┤ │何人かか│材料の│板の方向│下穴あけ│下地│ │らは気付│固定の│とけずれ│の位置と│作り│ │いて欲し│仕方 │方の違い│深さ │の差│ │いこと │ │ │ │ │ └────┴───┴────┴────┴──┘  同じ工程における、加工の仕方を調べ、仲間と教え合うことができるよ うに、同じ課題をもった生徒十名程度で追求班をつくる。調べ活動や試行 活動では、またいくつかに分け、やりやすいようにする。 検討の時は合 わせて十名程度で話し合い、よりよい方法をまとめさせる。 ┌─────────────────────┐ │ウ 生徒が個々に調べられる、資料や材料を準│ │ 備する。 │ └─────────────────────┘  生徒が個々に工具の使い方を調べられるように、資料集を本棚に整理、 配置したり、ビデオで繰り返し見れるように準備する。また、実際に試行 できるように材料や工具を準備し、活動を促す。<ビデオ資料>  「木製品を作る」開隆堂版(切断、組み立て)  「切削の仕方」 開隆堂版(かんながけ)  他に試行活動ができるように各班に板片(各自1枚)を4枚渡しておく。 ┌─────────────────────┐ │エ 工程のほぼ同じレターラックを製作させる│ └─────────────────────┘  全員にほぼ同じ作品を作らせることで、製作上の問題点を共通にすること ができる。前面の板の形は自由に構想させ、各自の創意・工夫を生かす。  レターラックでの反省を、次の作品に生かしたり、加工の仕方を繰り返 し追求させていくために全員に同じ製作の経験させる。   (4) 指導計画 (P○○参照)−全35時間    @ レターラックの製作 8時間    ( 本時 4/8 時間 )    @ 設計        7時間    @ 木製品の製作     20時間   (5) 授業の実際   ア、本時のねらい 資料を調べたり、試行活動を 通して工具の使い方を検討することから加工の仕方を見いだし、仲間に伝え て工程表を作ることができる。    イ、展開の概要と考察<前時の概要>  レターラックの製作で、各自が木取りのけがき線を引き終わった段階で、  加工の仕方を自由に調べ、班で話し合った。 @ ほぼうまく作れたものと、切断、切削、組み立 て塗装をすべて失敗した  2つの見本(教師作品) を観察した。         (見本の写真) @ 自由に工具の使い方を試験片で試し、自分にと ってうまく作れない工程を班で出し合った  (生徒の出した問題点)  <切断>・切り口が段々になる ・曲がって切れ   る ・なかなか切れない ・割れてしまう  <切削>・すべすべに削れない ・厚さが狂う   ・木口が割れる ・時間がかかる  <組み立て>・板が割れる ・釘が曲がる、飛び   出す ・寸法が合わない ・傷がつく  <塗装>・平らに塗れない @ 班で、経験から各工程の留意点を出し合い、な  お解決の難しい問題点にまとめた。 @ 自分がうまく作れない工程の工具の使い方を調  べるように、班で分担した。割り振りが4つの工  程になったのは8班。3つの工程は3班。 @ 分担した工程毎に追求班を作り、追求方法を確  認したり、課題として次のように板書した。  【切断の班】  ・切り始めを気をつける ・切り口をきれいに  ・真っすぐに切る  【切削の班】  ・正しいきちんとした工具の使い方と削り方  ・かんなのあつかい方と刃の出し方  P1 の課題「かんなのあつかい方と刃の出し方」  【組み立ての班】  ・釘の打ち方とボンドの接着の仕方  【塗装の班】  ・なぜクリアーラッカーのむらができるか  P7 の課題「との粉、クリアーラッカーの塗り方        を調べる。」 <本時> @ 加工の仕方を明らかにするために、追求班ごと  に調べたり、試作活動をする。 ┌─────────────────────┐ │<発問> それぞれの工具を使って、きれいに│ │正確に仕上げるためには仲間にどんなことを伝│ │えたらいいですか。調べたり、試してみなさい│ └─────────────────────┘ @ 各追求の班で相談する。 <切削の班の活動> P1 工具の使い方を追求する。調べ方はビデオをみ  てメモをし、資料をみる。実際にやってよい点を  みつける。 (班の生徒の発表より、ビデオの内容を次のように 黒板にまとめる。)  1 かんなの刃の出し方は刃をたたく  2 刃の出す長さは0.1mm  3 木口削りは 2/3を削って残りを裏から削る  4 かんなの持つところは先と後ろ  5 かんなを目にそって削る P1 資料集を見る時間がないので実際にやってみよ  う。(黒板通り椅子の上で試行する。)   出ていた疑問の、材料に線がついてかんなが止  まってしまう原因を考えて欲しい。 P2 途中で力を抜いてしまうとなると思う。 P3 木の部分が短いと刃がひっかかって止まるのだ   と思う。 P2 いくら刃を0.2mm にできたとしても、力を入れ  てしまえば仕方がないので、力を変えないことが  大切だ。 P4 刃は出さなかったほうがよい。 P1 力を変えないことは一致したので、これはいい  ことにする。 <塗装の班の活動> P5 むらができないようにするにはどうするかを皆  に伝えられるように調べよう。 P6 途中で乾いてむらになるので、はけにたっぷり  としみこませてさっさと塗れば良い。 P7 塗りはじめは力を入れて押し付けるとそこに一  杯出てしまい、後が出なくなる。初めから終わり  まで同じ強さで塗れるようにする。 P8 木の端をそのままにして塗るとたれて、裏側が  うまくできない。 P5 実際にやってみよう。 (各自が塗料の量を変えて何度か塗ってみる) P9 一度紙やすりをかけ、2度塗りをするんだ。P6 2、3回これを繰り返すのだね。 P5 まとめをする。「目止め剤をたっふりとふくま  せて塗る」はできたのでいいか。「初めから同じ  強さで塗る」と言うのはいいか。 P6 1度目はあまり光らないが、乾かしてからやす  りをかけてもう一度塗ると色が変わった。2度が  よい。 P8 目止め剤でもクリアーラッカーでも乾かないう  ちに塗るとだめだ。十分乾いてからやすりをかけ  るとよい。 P9 はけに塗料をあまり一杯つけると泡がついてし  まう。たれることもあるので毛先につける程度に  するときれいになる。 (この後、との粉の落とし方について意見が分かれた が根拠がそれぞれなく、結論がでないまま時間切れに なった。) │ 資料から得た方法であるが、試験片を使った│ │試し活動で比較し、ある程度の根拠を基に仲間│ │に伝えようと努力していた。 │ │ しかし、切削も塗装ももっと活動の範囲を狭│ │くして調べやすくすることが必要である。 │ A 持ち帰った加工の仕方を基に工程表を作る。 ┌─────────────────────┐ │<指示>探究してきたことを班で伝えなさい。│ │みんなが確認できたものから、それを工程表に│ │記入しなさい。 │ └─────────────────────┘ <班での切削の検討の例> P10刃の出し方はかんな台から0.1mm 出るように調  節する。 P11 0.1mmなんてどうやって調節するのか。 P12 0.1cmじゃないのか。 P10 教科書にのっているぐらいでいい。 P11 0.1mmといったらすごい。 P12(教科書を見て)かんな台って何か。 P13大きな木みたいの。ここにかんなの刃がある P12分かった。0.1mm にするのか。 P10約 0.1mmにする。あと、かんなで木を削る時は  木にぺったりくっつけて浮かせないようにする。 P12浮かせない。止めないで思い切りよくやる。 P13工具は何を使うか。 P10かんな、ドレッサーだ。 P12こば削り台もだ。 P10の工程表(切削の部分)     (図1) <班での塗装の説明の例> P6 ラッカーを塗る前にとの粉を塗る。薄く塗り過  ぎると取るときが大変である。との粉は良く落と  さないと茶色の固まりになる。(ラッカーは)た  っぷりつけちゃうとたれる。何度も塗る。これが  1度目(の作品)でこれが2度目だが、色、ザラ  ザラ、ツルツルと違うようになっている。やすり  はあまりごしごししないで磨く程度で、表面は常  に磨く程度に。ラッカーは木目にそってかける。 P6 の工程表(塗装の部分)        (図2) │ どの生徒も自分の調べてきたことを発表する│ │時に、根拠を挙げたり、実物を見せるなどして│ │説明していた。説明を聞く生徒も実物や資料を│ │見ながら質問したり、記録したりしていた。 │ │ 自分なりに加工の仕方を調べ、仲間に説明す│ │ることは、根拠を明らかにしたり、実物で確か│ │めるなどの活動をうながすことになった。 │ │ しかし、実際に調べなかった生徒にとっては│ │聞いたことを工程表に書き込むだけが多くなっ│ │た。時間がなく、工程表に全部書き込んだ生徒│ │は何人もいなかった。 │ V 実践を通して言えること @ 工具の使い方を追求しやすくするために、生徒にVTRの視聴、試作が  自由にできる場を与えることが有効である。 A 見通しをもった製作をさせるには、個々の生徒に合ったそれぞれの工具  の使い方を選択させ、調べさせることが大切である。 B 自分の技術を正確に知り、加工の仕方のどこが具体的に分からないのか  を個々に明らかにさせる手立てが必要であろう。