たどって行くと恐ろしいストーリーが…中学校1年生にドン君と言う男がいた。彼は体も大きく、悪の典型のような動きをす るのである。集団規律は殆ど守らない、自習などがあれば率先して寝てしまう。ただ、 不思議な事に子ども達には一目置かれているのである。仲間にはやさしいのだ。 しかし、学級担任の人間的な接近から半年あまりで本音を言う人間に戻ってしまった。 問題児としてきた男がである。そして誰もが話さなかった出来事をポツリポツリと語 ってくれたのである。この話を聞いてまさに子どもの世界はドラマを越えていると思っ たのである。大人しい、中学校では3年間1人も友達ができずに孤立していたY君が実 は小学校では最高のワルだったのだ。4年生頃は誰よりも大きくて、乱暴でわがまま放 題だったと言うのである。陰でワルをやり、恐れられていたから彼の言うことは誰もが 聞く人間関係だったらしい。担任の先生もY君に用を言いつけると、学級に徹底出来た から重宝していたらしい。警察署長と暴力団組長をくっつけた役がY君だったのだ。 ドン君は餌食にされ、体育館の真ん中でズボンを脱がされて「セックスごっこ」とい うのを演じさせられたと語ってくれたこともある。そういう力関係が子どもの成長とと もに崩れて逆転したのである。しかし、ドン君はいじめはしなかったのである。 彼の目標は教師に向けられていたからである。恐ろしいまでの教師不信である。 確かに4〜5年生の時にのさばったY君を認め、結果的に援助していたのは担任の先 生だったからである。気づかない、指導しない大きなツケがY君、ドン君に回っていっ た事は犯罪と言ってもいいと思っている。